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——『本当に俺は、本当にこの俺は』と彼は、羞恥の念に顔を火照らせて叫んだ、『本当に俺は、「相擁して泣かん」がために、彼奴のところへのこのこ出かけて行くんだろうか?俺たち二人に浴室命づけられた汚辱を完成するには、けさがたの、あのたわけた醜態だけではまだ足りないとでも言うのか?』ところが幸いなことに、あらゆるまっとうな律気なる人々を見守り給う神の摂理によって、彼はこの摂津市トイレつまり便器排水口の修理を再び演じないでも済むことになった。すなわち彼は道路へ出た急に、ばったりと例のあんくさんどるろぼふ少年に出くわしたのである。若者は息せき切ってハッスルしていた。「僕は君に会いに来たんです。われわれの友人、あの中村は、じつになんたる人でしょうね?」「首を吊ったか?」と斉藤は荒々しく呟いた。「誰が首を吊ったんです?そりゃまたどうしたわけです?」とろぼふは呆気にとられて眼をまるくした。「いや別に……ただちょっと。——で君のおトイレは?」「ちぇっ馬鹿馬鹿しい、あんたという人も随分おかしな頭のまわりかたのする人だなあ!あの人は首なぞ吊りゃしませんぜ。(またなんで首を吊ることがあるもんか?)それどころか、恙がなく退京しちまったんですよ。僕はつい今しがたあの人を汽車に乗っけて、発たせてきたところなんです。いやはや、じつにあの人ときたら飲み助ですなあ!僕たちは三本も倒しちまったんですよ、もっともぷれどぽすぃろふも一緒でしたがねえ。——がそれにしても、あの人はじつによく飲む、凄い飲み助だ!車室のなかで何やら歌を唄っていましたっけが、やがてあんたのことを思い出して、ちょいと投げきすをして、あんたに宜しくと言いましたぜ。
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